高齢者に推奨される主なワクチン
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1. インフルエンザワクチン
• 推奨理由:高齢者はインフルエンザによる合併症リスクが高く、重症化や死亡に至るケースが多い。
• 効果:インフルエンザワクチンの接種により、高齢者の入院率が27%〜39%減少したとの報告があります[1]。
• 死亡率:接種していない高齢者は、接種者に比べてインフルエンザ関連死亡率が約1.8倍高いとされています[2]。
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2. 肺炎球菌ワクチン(PPSV23 または PCV13)
• 推奨理由:肺炎は日本の高齢者死亡原因の上位にあり、その多くが肺炎球菌によるもの。
• 効果:肺炎球菌ワクチンで、65歳以上の侵襲性肺炎球菌感染症のリスクが45%減少します[3]。
• 接種率:2022年時点、日本における65歳以上の接種率は約45%[4]。
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3. 帯状疱疹ワクチン
• 推奨理由:加齢による免疫低下で、帯状疱疹のリスクが高まります。
• 罹患率:60歳以上の発症率は年間1,000人あたり8〜12人で、50代の約2倍です[5]。
• 効果:不活化ワクチン「シングリックス」は、50歳以上での発症リスクを約90%減少させます[6]。
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4. 新型コロナウイルスワクチン(COVID-19)
• 推奨理由:高齢者では重症化・死亡のリスクが極めて高い。
• 死亡率:80歳以上の死亡率は感染者のうち**約10%**に達すると報告されています[7]。
• 効果:mRNAワクチンの追加接種で入院リスクが80%以上減少[8]。
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5. RSウイルス(RSV)ワクチン
• 推奨理由:RSウイルスは乳幼児だけでなく、高齢者にも肺炎や急性呼吸不全を引き起こす重大な病原体です。
• 罹患率:米国CDCの推定では、65歳以上のRSウイルスによる年間入院者数は約17万人、死亡者数は約1.4万人にのぼります[9]。
• 効果:2023年に承認されたアレックスビー(Arexvy、GSK社)などのRSウイルスワクチンは、60歳以上において発症リスクを82.6%減少させたという臨床データがあります[10]。
• 日本での状況:日本でも2023年に60歳以上を対象としたRSVワクチンが承認され、接種が開始されています[11]。
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■ 出典一覧
[1] Nichol KL et al. (2007). Effectiveness of influenza vaccine in the community-dwelling elderly. NEJM.
[2] 厚生労働省「令和4年インフルエンザワクチンの効果に関する報告書」
[3] Tomczyk S et al. (2014). Use of PCV13 and PPSV23 vaccines among adults ≥65 years. CDC MMWR.
[4] 日本感染症学会「成人肺炎球菌ワクチン接種率に関する統計」(2022年)
[5] 帯状疱疹研究会報告書(2021年)
[6] Lal H, et al. (2015). Efficacy of an adjuvanted herpes zoster subunit vaccine. NEJM.
[7] 国立感染症研究所「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)死亡率報告」
[8] 厚生労働省「令和5年秋開始接種の効果分析」
[9] CDC(米国疾病予防管理センター)”Burden of RSV in older adults in the United States”
[10] GSK社治験データ、New England Journal of Medicine (2023)
[11] 日本ワクチン学会「RSウイルスワクチンに関するQ&A」(2024年版)

 

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