帯状疱疹について

帯状疱疹の原因

帯状疱疹は、水痘(水疱瘡)ウイルスが原因で起こります。加齢などによる免疫機能の低下が発症の主な要因です。水痘が治癒した後も、ウイルスは体内の神経節に潜伏し続けます。免疫機能が低下すると、このウイルスが再び活性化し、神経に沿って皮膚に痛みを伴う発疹を引き起こします。これが帯状疱疹です。

帯状疱疹の初期症状

帯状疱疹の初期症状は、皮膚の痛み、かゆみ、違和感などが、皮膚症状が現れる前に神経に沿って現れることがあります。これらの初期症状は、筋肉痛や神経痛と間違われることがあり、早期発見が遅れる原因となることがあります。

帯状疱疹の発症リスク

日本人の成人の9割以上が、帯状疱疹を発症する可能性があります。特に、50歳代から発症率が増加し、80歳までに約3人に1人が帯状疱疹を発症すると言われています。

基礎疾患と帯状疱疹

糖尿病やがんなど、免疫機能を低下させる病気が原因で帯状疱疹を発症することもあります。持病のある方は、持病のない方と比較して、帯状疱疹の発症リスクが1.9~8.4倍高くなるというデータがあります。

  • 高血圧:1.9倍
  • 糖尿病:2.4倍
  • 関節リウマチ:2.0倍
  • 腎不全:2.2倍
  • 悪性リンパ腫:8.4倍
  • 全身性エリテマトーデス:4.1倍
  • 各種がん:2~8倍
  • 椎間板ヘルニア:2.2倍

帯状疱疹の多様な症状

帯状疱疹は、体の左右どちらか一方にピリピリとした痛みが現れ、その部分に赤い発疹が出るという典型的な皮膚症状以外にも、頭痛、発熱、倦怠感などの全身症状を伴うことがあります。顔や目の周りに症状が現れることもあります。稀に、運動神経麻痺や髄膜炎など、重篤な合併症を引き起こすこともあります。

帯状疱疹の合併症

帯状疱疹の代表的な合併症として、皮膚症状が治った後も痛みが続く帯状疱疹後神経痛(PHN)が挙げられます。50歳以上で帯状疱疹を発症した人の約2割がPHNになると言われており、80歳以上の高齢者では約3割とさらに高くなります。

その他、帯状疱疹が目や耳に現れた場合には、めまいや耳鳴りなどの合併症が見られることがあります。重症化すると、視力低下や顔面神経麻痺などの症状が出る場合もあります。

帯状疱疹の治療

帯状疱疹の治療は、原因ウイルスを抑制する抗ウイルス薬などを用いて行われます。抗ウイルス薬による治療は、発症後72時間以内に開始することが推奨されています。早期治療により、症状の軽減や合併症のリスクを低減できます。帯状疱疹の痛みに対する治療も重要です。帯状疱疹後神経痛(PHN)に対しては、鎮痛薬、神経ブロック、抗うつ薬など、様々な治療法が用いられます。

帯状疱疹が疑われる場合は、皮膚科、内科、ペインクリニックなどの医療機関を受診し、医師に相談の上、適切な治療を受けることが大切です。

帯状疱疹の予防

帯状疱疹を予防するための予防接種として、シングリックスと乾燥弱毒生水痘ワクチンがあります。

 1.シングリックス

  • 帯状疱疹に対する予防効果は、50歳以上で97%、70歳以上で90%と報告されています。さらに、5.6年~9.6年間の追跡調査においても、89%の予防効果が確認されています。
  • シングリックスは、合計2回の筋肉内注射が必要です。
    • 50歳以上の方:通常、1回目の接種から2か月後に2回目の接種を行います。2か月を超えた場合でも、6か月後までに2回目の接種を行います。
    • 帯状疱疹に罹患するリスクが高いと考えられる18歳以上の方:通常、1回目の接種から1~2か月後に2回目の接種を行います。2か月を超えた場合でも、6か月後までに2回目の接種を行います。
  • ワクチン接種後も、ストレスや過労を避け、バランスの取れた食事や十分な睡眠を心がけるなど、日頃の健康管理が大切です。

シングリックスの安全性と副反応

シングリックス接種後には、注射部位の痛みや腫れなどの副反応が現れることがあります。主な副反応(10%以上の頻度)としては、以下のものが報告されています。

  • 注射部位の痛み:70%、赤み:37%、腫れ:24%
  • 注射部位以外の症状:筋肉痛(37%)、疲労(35%)、頭痛(28%)、悪寒(21%)、発熱(17%)、胃腸症状(12%)

シングリックスの接種を受けられない方

以下に該当する方は、シングリックスの予防接種を受けることができません。

  • 明らかに発熱している方(37.5℃以上)
  • 重い急性疾患にかかっていることが明らかな方
  • 過去にシングリックスの成分によってアナフィラキシーを起こしたことがある方
  • その他、医師が予防接種を受けることが不適当と判断した方

接種後の注意点

  • 接種後30分程度は、接種した医療機関内で安静にし、体調の変化がないか確認しましょう。
  • 接種当日は、激しい運動を避け、注射部位を清潔に保ってください。接種当日の入浴は問題ありません。
  • 注射部位に異常な反応が見られたり、体調に変化を感じた場合は、すぐに医師の診察を受けてください。

 

 2.乾燥弱毒生水痘ワクチン

  • 50歳以上の方を対象とした帯状疱疹予防を目的とするワクチンです。
  • 水痘ワクチンを乾燥弱毒生ワクチンとして使用することで、帯状疱疹の発症を抑制する効果が期待できます。
  • 接種回数は1回、皮下注射で行います。

副反応:

主な副反応: 接種部位の腫れや痛み、発赤、発熱など
まれに、水疱、発疹、アナフィラキシーなどの重い副反応が起こることがあります。
接種後の注意点:

接種後30分間は、医療機関内で様子を観察してください。
接種後、生ワクチンなので、まれに水痘様の発疹が出ることがあります。
接種後1か月間は、生ワクチンなので、妊娠を避けてください。
接種後、接種部位の異常な腫れや、高熱、その他体調の変化があった場合は、速やかに医師に相談してください。

シングリックス(Shingrix)と乾燥水痘生ワクチンの比較表

 

項目 シングリックス(Shingrix) 乾燥水痘生ワクチン(ビケンなど)
ワクチンの種類 不活化ワクチン(サブユニット) 弱毒生ワクチン
主成分 VZV糖タンパクE+アジュバント 弱毒化した生ウイルス
接種対象 50歳以上¹ 50歳以上²
接種回数 2回(2~6ヶ月間隔)¹ 1回²
接種方法 筋肉内注射(IM)¹ 皮下注射(SC)²
帯状疱疹予防効果(50歳以上) **97.2%**³ **51.3%**⁴
帯状疱疹予防効果(70歳以上) **89.8%**³ **37.6%**⁴
帯状疱疹後神経痛(PHN)予防 **91.2%**³ **67%**⁴
有効性の持続期間 少なくとも 10年以上 5年
免疫不全者への使用 可能(不活化ワクチンのため)¹ 不可(生ワクチンのため)²
副反応 注射部位の痛み、倦怠感、発熱が比較的強い¹ 軽度の副反応(発赤、腫れなど)²
推奨度(CDC・WHO・厚生労働省) 第一選択(推奨)⁷ シングリックスがない場合の代替

 

参考文献

 1. GSK(グラクソ・スミスクライン). シングリックス製品情報.

 2.厚生労働省. 帯状疱疹ワクチンに関する情報.

 3.CDC(アメリカ疾病予防管理センター). Shingrix: Clinical Overview.

 4.New England Journal of Medicine(NEJM). A Vaccine to Prevent Herpes Zoster and Postherpetic Neuralgia in Older Adults.

 5.日本臨床内科医会. 帯状疱疹ワクチンの効果と持続性.

 6.Shingles Prevention Study. Long-term efficacy of live attenuated zoster vaccine.

 7.WHO, CDC. Guidelines on Herpes Zoster Vaccination.

 

 

●ワクチン費用の補助について

横浜市では対象者は帯状疱疹ワクチンの助成を受けられる制度がスタートする予定です。詳しくはリンク先をご確認ください。

横浜市帯状疱疹ワクチン接種(令和7~11年度経過措置含む)

https://www.city.yokohama.lg.jp/kenko-iryo-fukushi/kenko-iryo/yobosesshu/yobosesshu/taijyouhousinn.html

 

 

当院での価格(2025年3月31日現在)

自費 シングリックス 1回 22,000円+初再診料

公費 シングリックス 1回 10,000円(自己負担分予定)

 

自費 乾燥弱毒生水痘ワクチン「ビケン」 1回 9,900円+初再診料

公費 乾燥弱毒生水痘ワクチン「ビケン」 1回 4,000円(自己負担分予定)

 

 

 

東戸塚メディカルクリニック